中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制では特別償却と税額控除を選択適用できるという話を聞いた事があるかもしれません。ただ、そもそも「特別償却」「税額控除」の違いが分からなければ、選択する事ができません。今回は「特別償却」「税額控除」の違いをご説明したいと思います。
特別償却とは
減価償却はご存知でしょうか。固定資産の取得価額を法定耐用年数の期間に渡って計上する手続きの事です。
特別償却は、通常の減価償却を超えて減価償却費の計上を特別に認める措置です。
その結果、経費計上できる枠が大きくなりますので、結果として納税額が減少します。
しかし、減価償却は、固定資産の取得価額を将来にわたって費用化する手続きなので、最大額は固定資産の取得価額までとなります。
そのため、その固定資産について費用できる累計額はあくまで固定資産の取得価額が限度となり、普通償却と特別償却は長い目で見ると同じ金額を償却する事となります。
つまり、費用化を早くする制度が特別償却となります。
税額控除とは
税額控除とは、法人税額や所得税額から一定の金額を控除する制度です。税額控除は税額を減少させる制度という事になります。ただし、税額がゼロである場合には、そもそも減少させる対象がない事から税額控除はできません。
特別償却と税額控除 どちらにメリットがあるか
特別償却は最終的に費用計上できる金額が通常の減価償却と変わりません。先に費用計上する分、将来の費用計上額が減少し、トータルの納税影響額はプラスマイナスゼロとなります。
一方で税額控除は、直接税額を減少させるため、トータルの納税影響額は減少します。
確かに税額控除は有利ではあります。
しかし、一時的に多額の費用を計上できる特別償却は計上年度の納税額を減少させる事が可能です。
例えば、100%即時償却となる中小企業経営強化税制の場合、500万円の機械装置を即時償却すると
500万円x表面税率37%=185万円の税減少効果があります。
一方で税額控除の場合、控除率10%として、500万円x10%=50万円の税減少効果があります。(分かりやすさ重視のため、やや正確性に欠けますが、概要を掴んで頂くための文章です。)
したがって、単年度の資金繰りの差は185万円-50万円=135万円 となり、特別償却有利となります。
特別償却と税額控除には、以上のような違いがあります。
まとめ
話を単純化すると固定資産の取得事業年度の資金繰りを重視するのであれば「特別償却」、トータルの税減少効果を得るのであれば「税額控除」という事となります。
設備投資は企業経営に非常に大きな影響を与えます。新工場を取得したものの稼働しなかったため民事再生となった等の記事を帝国データバンク等のニュースでご覧になられた方は多くいらっしゃるかと思います。事業計画、タックスプランニング、借入の返済計画や借換計画を含めた資金繰り計画を練る事が重要です。