経済産業省は2026年6月11日、セーフティネット保証5号について、定例の業況調査に加えて中東情勢の影響に係る臨時の業況調査を行い、2026年7月1日から583業種を指定したと公表しました。前回(2026年4月1日)の指定は520業種で、63業種の増加となります。本記事では、中小企業庁・経済産業省の公表資料に基づき、制度の枠組み、認定要件、手続きの流れ、会計上の取扱いを整理します。
本記事の前提:本記事は2026年8月6日時点の公開情報に基づきます。指定業種は原則として四半期ごとに見直されるため、現在の指定業種一覧(令和8年7月1日〜同年9月30日)は指定期間の満了後に入れ替わります。自社が対象となるかどうかは、必ず中小企業庁が公表する最新の指定業種一覧でご確認ください。
現在の指定期間:2026年(令和8年)7月1日 〜 2026年9月30日/指定業種数583業種
1. セーフティネット保証5号の概要
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業者について、信用保証協会が通常の保証とは別枠で債務を保証する制度です。資金調達そのものを直接補助する制度ではなく、金融機関から借入を行う際の保証枠を広げるものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | セーフティネット保証5号(業況の悪化している業種・全国的) |
| 根拠 | 中小企業信用保険法第2条第5項第5号 |
| 指定業種数 | 583業種(2026年7月1日指定。前回2026年4月1日指定は520業種) |
| 指定期間 | 2026年7月1日 〜 2026年9月30日 |
| 保証限度額 | 通常の限度額2億8千万円に加え、別枠で2億8千万円(普通保証2億円+無担保保証8千万円) |
| 保証割合 | 80%(別枠部分。残る20%は金融機関の負担) |
| 認定を行う機関 | 市区町村長(特別区長) |
| 対象資金 | 経営安定資金 |
| 保証人 | 原則として第三者保証人は不要 |
「別枠」と「80%保証」は、それぞれこういう意味です
別枠とは、ふだん使える保証の枠(一般保証)とは別に、もう一つ枠が用意されるという意味です。一般保証の枠をすでに使っていても、この制度の枠から改めて保証を受けられます。公表資料では、一般保証・別枠のそれぞれについて普通保証2億円・無担保保証8,000万円が上限として示されています。
80%保証とは、信用保証協会が保証するのは借入額の8割で、残りの2割は保証の対象外である、という意味です。借りられる金額が8割になるという意味ではありません(よく取り違えられる点です)。保証されない2割は金融機関が回収リスクを負う形になるため、認定を受けたからといって金融機関の審査がなくなるわけではありません。
2. 2026年7月の指定で何が変わったか
今回の指定は、定例の業況調査に加え、中東情勢の影響を踏まえた臨時の業況調査を行った結果によるものです。指定業種数は520業種から583業種へ増加しており、これまで対象外だった業種が新たに含まれている可能性があります。
また、2026年7月1日からの指定に先立ち、2026年6月11日から全国の信用保証協会で事前相談の受付が開始されています。相談窓口は、各信用保証協会に設置されている「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」です。
過去に「指定業種ではなかった」と確認した事業者であっても、今回の見直しで対象に変わっている場合があります。指定業種一覧は四半期ごとに更新されるため、前回確認した時点の結果をそのまま前提にせず、現行の一覧で改めて確認することが必要です。
3. 認定を受けるための要件
セーフティネット保証5号を利用するには、指定業種に属する事業を行っていることに加えて、以下のいずれかの要件を満たすことについて市区町村長の認定を受ける必要があります。要件は大きく4つの類型に分かれ、それぞれ「指定事業のみを行っている場合」と「指定事業と指定業種以外の事業を兼業している場合」で判定方法が異なります。
3-1. 売上高等の減少による類型
| 区分 | 判定内容 |
|---|---|
| 指定事業のみ(兼業を含む) | 企業全体の最近3か月間の売上高等が、前年同期と比較して5%以上減少していること |
| 指定事業と非指定事業を行っている場合 | 最近3か月の指定事業の売上高等が企業全体の売上高等の5%以上を占め、かつ企業全体と指定事業のそれぞれの最近3か月の売上高等が前年同期と比較して5%以上減少していること |
3-2. 創業者等の類型(前年同期の実績がない場合)
| 区分 | 判定内容 |
|---|---|
| 指定事業のみ(兼業を含む) | 企業全体の最近1か月の売上高等が、その直前3か月の月平均売上高等と比較して5%以上減少していること |
| 指定事業と非指定事業を行っている場合 | 最近1か月の指定事業の売上高等が企業全体の売上高等の5%以上を占め、かつ企業全体と指定事業のそれぞれの最近1か月の売上高等が直前3か月の月平均と比較して5%以上減少していること |
3-3. 原油等の仕入価格上昇による類型
今回の指定拡大は中東情勢の影響を踏まえたものであり、燃料費・原材料費の上昇が経営を圧迫している事業者にとっては、売上高の減少だけでなくこの類型に該当するかどうかも確認する価値があります。指定事業のみを行っている場合、次の3つをすべて満たすことが要件です。
- 企業全体の最近1か月の売上原価のうち、原油等の仕入額が20%以上を占めていること
- 企業全体の最近1か月の原油等仕入単価が、前年同月と比較して20%以上上昇していること
- 企業全体の最近3か月の売上高に占める原油等の仕入額の割合が、前年同期と比較して上回っていること
指定事業と非指定事業を兼業している場合は、最近1か月の指定事業の売上原価が企業全体の売上原価の20%以上を占めていることに加え、上記に相当する要件を企業全体と指定事業のそれぞれについて判定します。
3-4. 売上高営業利益率の減少による類型
| 区分 | 判定内容 |
|---|---|
| 指定事業のみ(兼業を含む) | 企業全体の最近3か月の月平均売上高営業利益率が、前年同期と比較して20%以上減少していること |
| 指定事業と非指定事業を行っている場合 | 最近3か月の指定事業の売上高等が企業全体の売上高の5%以上を占め、かつ企業全体と指定事業のそれぞれの最近3か月の月平均売上高営業利益率が前年同期と比較して20%以上減少していること |
売上高そのものは横ばいでも、原材料費や人件費の上昇で利益率が落ちている場合は、この類型で要件を満たすことがあります。判定には月次の売上高と営業利益が必要になるため、月次決算が整理されていることが前提となります。
4. 自社が指定業種かどうかの確認方法
指定業種は日本標準産業分類の細分類番号(4桁)で示されます。中小企業庁は次の手順を示しています。
- 日本標準産業分類において、自社が行っている事業の該当業種を特定する(分類が不明な場合は、政府統計の総合窓口 e-Stat の日本標準産業分類検索サイトで検索できます)
- 該当業種が属する細分類番号(4桁)を特定する
- 中小企業庁が公表する指定業種一覧に、その細分類番号の記載があるかを確認する
確認にあたって注意が必要なのは、指定業種一覧の「指定業種」欄に「〜に限る。」「〜を除く。」といった条件が付されている場合があることです。この場合、細分類番号が一覧に載っていても、その条件の範囲外の事業は対象になりません。番号の一致だけで判断せず、条件の文言まで確認する必要があります。
5. 手続きの流れ
| 順序 | 手続き | 窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 認定申請書を提出し、認定を受ける(事実を証明する書面等があれば添付) | 法人は登記上の住所地または事業実体のある事業所の所在地、個人事業主は事業実体のある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等 |
| 2 | 認定書を持参して保証付き融資を申し込む | 希望する金融機関、または所在地の信用保証協会 |
| 3 | 信用保証協会・金融機関による審査 | 同上 |
認定書に有効期限が定められている場合があるため、認定を受けてから融資を申し込むまでの期間についても、申請時に市区町村の窓口で確認しておくとよいでしょう。神奈川県内の事業者の場合、保証の窓口は神奈川県信用保証協会となります。
6. 利用にあたっての留意点
6-1. 認定を受けても融資が実行されるとは限らない
市区町村長の認定は、セーフティネット保証5号の保証を利用するための入口の要件です。認定を受けた後も、信用保証協会と金融機関による審査があり、希望どおりの金額・条件で融資を受けられない場合があります。資金繰りに不安がある場合は、認定手続きと並行して、早めに金融機関や信用保証協会に相談しておくことが実務的です。
6-2. 「別枠」の意味
本制度の保証は、一般保証の限度額(2億8千万円)とは別枠で利用できます。一般保証の枠を使い切っている場合でも、追加の保証を受けられる余地があるという点が制度の中心的な効果です。ただし、別枠であることは限度額の上限を示すものであり、その金額まで必ず借りられることを意味するものではありません。
6-3. 指定は期間が区切られている
現在の指定は2026年9月30日までです。10月1日以降は改めて業況調査に基づく指定が行われるため、現在は対象でも次の期間では外れる可能性があります。逆に、今回対象外だった業種が次回対象になることもあります。利用を検討している場合は、指定期間内に認定申請を進めるかどうかの判断が必要になります。
7. 会計・税務上の取扱い
セーフティネット保証5号によって調達するのは借入金であり、補助金や助成金とは異なり、受け取った資金そのものが収益になることはありません。借入時は借入金(負債)として計上し、返済に伴う元本部分は損益に影響しません。損益に影響するのは支払利息と信用保証料です。
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 借入金の元本 | 負債として計上。受入時・返済時ともに損益には影響しない |
| 支払利息 | 期間の経過に応じて営業外費用に計上 |
| 信用保証料 | 保証期間に対応して費用配分するのが一般的。一括で支払った場合、翌期以降に対応する部分は前払費用として資産計上する処理が採られます |
| 繰上返済時の保証料返戻 | 返戻を受けた場合は、前払費用の取崩しまたは収益として処理します |
なお、要件の判定に用いる「最近3か月の売上高」「月平均売上高営業利益率」は月次の数字を根拠とするため、月次で試算表が締まっていないと申請時に数字を作り直す必要が生じます。認定申請書には売上高等を記載する様式が用いられており、市区町村によって様式や添付書類の指定が異なるため、申請前に所在地の市区町村の様式を確認することをおすすめします。
8. 参考リンク(公式情報源)
- 経済産業省「セーフティネット保証5号について、中東情勢の影響に係る臨時の業況調査を踏まえた業種の指定を行うとともに、事前相談の受付を開始します」(2026年6月11日)
https://www.meti.go.jp/press/2026/06/20260611001/20260611001.html - 中小企業庁「セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))」(指定業種一覧・認定要件)
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.html - 神奈川県信用保証協会
https://www.cgc-kanagawa.or.jp/
【ご利用上の注意】
本記事は本融資制度の一般的な情報提供を目的としたものであり、融資の可否を保証するものではありません(本記事の作成日:2026年8月6日/神奈川県内の中小企業・個人事業主を主な想定読者としています)。融資の可否・条件は金融機関(日本政策金融公庫、信用金庫、銀行等)が個別に審査・判断するため、本記事で示した金利・限度額・要件はあくまで公表時点の制度上の枠組みです。公開後に金利改定・制度改正・取扱中止等が生じる可能性があります。最新情報は、本文掲載の公式情報源にて必ずご確認ください。記事内容に基づく判断・行動により生じた損害について、藤原淳税理士事務所は一切の責任を負いかねます。当事務所では、税務・記帳・事業計画書作成支援などの税理士業務の範囲でご相談を承ります。
